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 #003 R168と五新線


※五新線ネタはこの先ほぼありません。予めご了承願います。

●その3

R168における奈良県と和歌山県との県境は実にあっけない。七色の集落を越えるとすぐに和歌山側の土河屋集落に差し掛かる。五条から新宮までのうち、峠らしい峠は遥か手前の天辻峠くらいであり、それ以降はひたすら十津川(和歌山県に入ると熊野川)を下る一方である。即ち五新線の工事は線内最難所を既にクリアしていた…とは言い難い。これまで走って来た地を見るに、五新線の工事がこのまま続くのなら、いっそ阪本以南は地下鉄(地中鉄?)にしてしまうべきかもしれない。下手に地表をウネウネと通しても、かの飯田線も真っ青になるレベルの土砂災害路線になっていただろう。尤も予算が無限大ならば、の話ではある。

旧本宮町に入るとR168をとりまく環境は一転し、平地が広がるようになる。本宮町伏拝(すごい地名だ…)にある道の駅で一休み。ここらで名物の「めはり寿司」を食したいところだが、道の駅の売店にも、道路を挟んだ向かいのAコープにも置いておらず。ふて腐れて駐車場に戻ると、龍神バスの路線車がやって来た。都心ではよく見かける、ノンステップバスであった(日デ西工ボディのPB-RM360GAN)。※画像欠落

つかの間の休憩ののち、さらにしばらく南下すると、世界遺産にも登録された、全国にある熊野神社の総本山・熊野本宮大社に辿り着く。再び車を駐車場に放り込み、多くの観光客に紛れ私も参拝することとした。


熊野本宮大社

熊野は「黄泉還りの地」、また「人生の出発(たびたち)の地」とも言われる。私情で恐縮だが、いま再出発を迎える私にとってぴったりの地である。この地の訪問は今回の旅行の目的の一つでもある。参拝は今回が初めてではなく三度目になるが、前回も、そして前々回も参拝の後に大きな転機を迎えている。

参拝を終え、駐車場に戻ると先ほどの龍神バスが目の前を通過して行った。

熊野本宮大社の先で一旦R168を離れ、R311の旧道に入る。道幅1.5車線の道を走ること数分、小ぢんまりとした湯の峰温泉に到着した。
 四村川という熊野川の小さな支流に沿った、鄙びた温泉地である。華やかな大旅館はなく、小規模な旅館が数軒立ち並ぶだけであり、旧来の湯治場の雰囲気を現代まで残している。世界遺産にも登録されたという名物風呂「つぼ湯」はここにある。駐車場に車を停めていると、またも目の前を先ほどの龍神バスが通り過ぎていった。一日に三度も出会うとは奇遇である。人の数は疎らだが、熊野古道絡みなのか、リュックを背負ったハイカーや、欧米系の外国人の姿もあった。
 旅館に混じって公衆浴場が一軒ある。自前のお風呂セットを抱え、公衆浴場へと向かう。本日二湯目である。


湯の峰温泉 公衆浴場

【表2 湯の峰温泉 公衆浴場 データ】
入湯年月2013.3
料金¥250(公衆浴場)
¥380(くすり湯)
¥750(つぼ湯)
営業時間6:00〜22:00(〜21:30 つぼ湯)
定休日なし
備品など石鹸・シャンプーなし
泉質含硫黄−Na−炭酸水素塩泉 92℃ 無色
データ年月2014.3
備考源泉掛け流し

浴室は「一般浴場」(¥250)と「くすり湯」(¥380)の二種類あり、いずれも源泉かけ流しだが、後者は加水せず源泉100%である。また件のつぼ湯に入浴する際もここで代金を支払う(¥750)。見たところ、つぼ湯は観光客向け、くすり湯は湯治客、一般浴場はジモ専というところか。私は250円払って一般浴場に入ってみた。数人いた先客は如何にも地元のお客さんという感じだった。
 一般浴室は内風呂のみ。湯船からは硫黄臭のする湯がオーバーフローされ、湯はわずかに白濁し湯の花が舞っている。ふと、宮城の鳴子温泉が頭をよぎった。泉温は加水して43.5度に調整されているようだが、感覚的にもう少し高いような気がする。
 河原には泉温92度の湯筒があり、ここで卵や野菜を茹でることができ、公衆浴場脇の売店でネットつき生卵が販売されている。ちなみにこのような「セルフ温泉玉子」(笑)は近畿圏では他に但馬の湯村温泉でも見られる。

熊野本宮大社の近傍にはこの湯の峰温泉以外にも、冬季には川をせき止めてつくる仙人風呂(残念ながら3月で終了していた)で有名な川湯温泉や、リゾートな雰囲気の渡瀬温泉がある。これらを総称して「本宮温泉郷」と呼ぶそうだ。

しばしの寄り道を終え、再度R168に戻る。走って数分のうちに新宮市へと入る。新宮市とは言え平成の大合併の結果であり、R168の起点(終点は枚方だ)である新宮の街はまだ遠い。そういえば本宮町も今は田辺市となっている。南紀を代表する東西の街が隣り合わせで接しているとは面白い。 新宮市熊野川町宮井で左手からR169と合流するが、ここでは左折しR169を進むこととする。




三重県南部の和歌山との県境付近に「湯ノ口温泉」なる温泉がある。以前ひょんな所でその名を知ったが、現居住地からは遠すぎて訪問する機会がなかった。本宮の町から直線距離で高々十数キロなので、これ幸いと訪れることとした。




R169と言えばR168と並ぶ紀伊半島縦断国道であり、その整備率はR168よりも上回ると聞いている。なるほど確かにセンターライン有りの二車線路で走りやすい。と北山川沿いの快走路をハイペースで流していたら…。

熊野川町九重で快走路は突如途切れ、1.0〜1.5車線の酷道へと早変わり。勾配こそ大したことは無いが、ウネウネと見通しの良くないカーブが連続する森の中の狭路となる。そしていつの間にか十津川村入りとなる。と言っても道路状況が劇的に変化する訳でもなく、相変わらずの狭隘路が続く。こんな狭い道に限ってダンプと対面することもしばしば。
 竹筒でR169から分岐し、R311を走る。実は本宮町からここまでR311が上位国道と重複していた。R311単独となっても狭隘路であることに変化は無い。むしろ1.0車線が基本となるので対向には場所を選ぶ。実際、ダンプと鉢合わせとなりこちらが何mもバックしたこともあった。
 狭路から解放されてしばらくすると北山川を渡り、三重県となる。橋を渡った直後、R311を離れ、北山川沿いの町道(市道?)をゆく。小集落の先に入鹿温泉「ホテル瀞流荘」がある。このホテルでも外来入浴は可能だが、お目当ての湯ノ口温泉は先にある。また、ここから湯ノ口温泉までは鉱山跡のトンネルを利用したトロッコ列車が走っている。湯ノ口温泉の名を初めて知ったきっかけは、このトロッコ列車だったのだが、生憎今回は下調べの類を何もしておらず、また時間も遅かったため、トロッコ列車には乗らず、車でダイレクトにアクセスすることとした。全く、これでは鉄ヲタ失格である(苦笑)
 しかし瀞流荘〜湯ノ口温泉を結ぶ道路もこれまた酷いものである。実際、「林道」の文字もありギョッとする。鬱蒼と茂った森の中の狭路、対岸のR311と同レベルである。だが部分的に広くなってる箇所が多い分、R311よりも走りやすい。言い換えれば、R311は林道未満のレベルということか。林道を抜け視界が開けると湯ノ口集落となり、そこからさらに一キロほど走ると湯ノ口温泉へとたどり着く。


湯元山荘 湯ノ口温泉

【表3 湯元山荘 湯ノ口温泉 データ】
入湯年月2013.3
料金¥400
営業時間9:00〜21:00
備品など石鹸・シャンプーあり
泉質ナトリウム・カルシウム−塩化物泉
データ年月2014.3
備考源泉掛け流し

一台たりとも対向車のなかった林道とは裏腹に、駐車場には車が十台弱が停まってある。入浴料は¥400。施設自体は一昔前の温浴施設といったところか。
 ここはお湯の勢いが凄い。内風呂にはお湯が豪快にドバドバと注がれ、そして大量にオーバーフローされている。さすが湧出量毎分1200Lは半端ない(使用は300Lである由。それでも充分多い)。露天風呂もあり、こちらも滝落としのごとく豪快に掛け流されている。

本日三湯目を堪能し、薄暗い林道を駆け抜けR311に戻る。ここから先のR311は田辺〜本宮のように二車線路と整備が進んでいる。その後、r62を経由し阿田和でR42に入る。交通量のべらぼうに多い(R168比)R42を走り、新宮の街へ向かう。その後はそのままR42を串本、周参見を抜け、田辺へ向かい、南紀唯一の某ネットカフェの駐車場でエンジンを停めた。



〜つづく〜

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